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映画現場100ぺん

映画館で観た映画について語ります

海よりもまだ深く―家族だからこそ知らない、家族の隠し事。

日本映画

はい、本日は『海よりもまだ深く』です。カンヌ国際映画祭の常連、是枝裕和監督の最新作ですね。

 

良多(阿部寛)の父が亡くなって半年。母・淑子(樹木希林)は一人で長年住み続けた団地で変わりなく過ごしている。父がいなくなって、実家に頻繁に顔を出すようになった良多だが、家に帰っても、母のへそくりを探すことばかりしている。15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのある良多はダメ男だ。妻・響子(真木よう子)と子供・真悟(吉澤太陽)に逃げられ、探偵事務所で働いて得た金はすぐにギャンブルに使ってしまう。子供の養育費も払ってあげたいし、子供が欲しいと言っていた野球用品も買ってあげたい。それなのに気が付くとギャンブルに手が出ている。探偵として素行調査をすると様々な人生の狂っていくその瞬間に出くわすことがある。浮気をした女性が「私の人生どこで狂ったんだろう」とぼやく。良多は小説に使おうとメモを取る。その言葉は良多自身への問いかけのようにも聞こえる。ひと月に一度の息子と会う日。息子をつれて、母のいる団地に向かう。その日は大型の台風が通過をするところだった。心配して迎えに来た響子も泊まることになり、嵐の夜はふけていく。監督は『海街diary』『そして父になる』の是枝監督。

 

 

 家族だからこそ隠したいことがある

是枝監督のテーマの一つに「一番身近で、一番知らない家族の物語」というのがあります。家族のことはなんでも知っている。だって家族だもん。そんなふうに思っている人は多いと思いますが、家族というのは案外わからないものです。今回の家族のように、バラバラに暮らしていると、さらに分からないことも多い。主人公良多は探偵事務所で働いていますれけれど、それは本来誰かに一番見られたくないことを探る仕事。妻の浮気、道ならぬ家庭教師との恋.....そんな面も含めて、いやその知りたくない面こそが、その人だし、その人の人生なのです。「私の人生どこで狂ったんだろう」自分が思い描いた自分とは程遠い自分を家族には隠していたい。家族だからこそ知られたくないこともある。日々をうまくやっていくためには、知らないほうが幸せなこともある。家族はそういう気持ちの中で隠し事をするのでしょう。

 

気になる池松壮亮君の存在

是枝作品に出てくる、阿部寛さんのダメ男ぶりは、さすがの一言に尽きますが、今回注目なのは池松壮亮君の探偵事務所の部下です。これ以上ないダメな男、良多の仕事のパートナーである町田健斗ですが、休みの日返上で息子の野球の試合の素行調査?にまで付き合ってくれてしまう部下。幼少期に父と別れた経験を持つ健斗君はなにかと、子供のころ父にしてもらってうれしかったことなどを良多に語ってくれます。とにかく良多に対して優しい。そこまで優しくしてくれる理由を健斗君は「篠田さんには借りがある」といいます。良多に思い当たる節はないようで、「そうだっけ?」といいますが、健斗君にとって良多がなにか人生で救われるようなことを言ったのではないかと思われます。それがなにであるかは問題でなくて、健斗君にとって一言で救われたということが重要なのでしょう。ダメ男にも、こんなことがあると思うとなんだか人生も捨てたもんじゃないと思えてきます。隠し事しているひとも、してない人もぜひ、家族を思いながら、映画館に出かけてみてください。